お金がない!生活がピンチのあなたは「生活保護」が受給できる?
一般的に「生活保護」というと、リストラされて仕事につけない人や高齢者、仕事に就くことが困難な障害を持った人などが受給しているイメージが強いかもしれません。
しかし実際には、20代や30代であっても、何らかの事情で生活が困窮している状態であれば受給することができます。
なかなか仕事が見つからず収入がない人、病気や怪我などで長く仕事を離れてしまっている人、母子家庭で、働いた収入だけでは生活が厳しい人など、様々な人が利用しています。お金がない!生活できない!という状態であれば、生活保護の対象になり得るのです。
しかし、生活保護はその受給条件がわかりにくく、どのような状態であれば受給できるのか、なかなか判断がつきにくいのも事実。
ここでは、ご自身の状態が生活保護を受給できる可能性があるのか、自分で診断するための基準を説明していきます。
まず、生活保護申請の基本条件を知ろう
社会のセーフティネットの1つとして、生活が困窮している人を支える「最終手段」と言われる生活保護。
食費や衣服費などの生活費、住宅費や医療費、介護費などが税金から支給されるわけですから、当然誰でももらえるわけではありません。受給する上では、満たさなければならない条件がいくつかあります。
借金や車、生命保険、持ち家があると申請ができないと思っている方も多いようですが、原則論で言えば、これらの資産があっても保護を受けられる場合があり、絶対条件ではありません。
では、申請のための基本条件は何なのか。形式的には次の3つだけです。
1.生活保護を受給できるのは世帯主だけ
まず第1に、生活保護を受けられるのは世帯主だけです。生活保護は世帯単位で受給するものなので、世帯の一部の人間だけが受給することはできません。
たとえ家族でも、別の場所に住んでいたり、別々に生計を立てている場合は別世帯と考えられます。逆に、血が繋がっていなくても、居住と生計をともにしていれば同一世帯と考えることが多いようです。
1人世帯の場合は、その人がかならず世帯主になります。2人以上の世帯の場合は、その中の誰かが世帯主になります。通常は働いている人(2人以上いる場合は収入が多い人)が世帯主に指定されます。
2.病気や怪我などで働くことができない、もしくは収入が極端に少ない
怪我をしてしまって動けない、精神疾患で仕事ができない時などは、生活保護を受けることができます。また
その差額を受給することが可能です。
例えば母子家庭で、子供が小さく、パート勤めをしても収入が少なく生活が成り立たない場合なども生活保護の対象です。あるいは若い人でも、1か月の収入が最低生活費よりも少なければ生活保護の対象になり得ます。
しっかりと働いても1か月の収入が5万円にしかならない場合、その地域の最低生活費がその方のケースで9万円と定められていれば、差額の4万円を生活保護として受け取ることができます。
世の中には、病気や怪我がなく、なおかつ働く気があるのにそれなりの収入がもらえる仕事に就けない人もいます。こうした人も生活保護を受給することができます。
ただし、継続的に生活保護を受給し続けるためには、働く気がある、つまり就職活動をする必要があります。
「働く気はない人」は生活保護を受給できないという原則があるのですが、その人が「働く気があるか」を判断するのは難しいものです。生活保護受給者にも職業選択の自由は認められています。仮に職を選ばなければ就職できるとしても、本人が拒否しているのならば無理やり就職させることはできません。
3.援助してくれる身内、親類がいない
例えば、自分と生計を一緒にしている家族がいて、その人が働ける状態で、収入がある程度あれば生活保護を受けることはできません。(例えば子供が就職していて一定の収入がある場合)
また、一緒に生活していなくても、援助可能な身内がいるかどうか、は調べられます。
生活保護を申請した際は、親や兄弟、3親等以内の親類に対し「扶養照会」が行われます。
これは、生活保護を受けたい人の援助ができるか否かを親や兄弟、3親等以内の親類に確認する書類で、もし援助が可能な人がいれば生活保護を受けることはできません。
ケースによって異なる生活保護の支給額
以上が形式的な受給条件となりますが、これまで述べてきた基準となる「最低生活費」の額は、家族構成によって、そして自治体によっても異なります。それは、生活保護が次の8つの「扶助制度」の組み合わせでできているからです。
生活保護で支給される8つの扶助制度
扶助項目 | 支給内容 |
---|---|
生活扶助 | 食費・衣服費など基本的な生活のための費用を支給 (ただし、使い途が限定されているというわけではない) |
住宅扶助 | 住居のための費用について実費を支給(※) 家賃の他、敷金、礼金、仲介手数料、更新手数料、補修費を支給。 |
教育扶助 | 子供の教育費用として小学校・中学校に通うための学費を支給 (学校給食費、学用品費、通学費、修学旅行費、医療費など) |
医療扶助 | この医療扶助制度があるため生活保護受給者は医療費がかからない |
出産扶助 | 出産に関する費用を支給 |
生業扶助 | 仕事に就くための教育・訓練に必要な費用を支給 (高校・高等専門学校・資格や職業訓練などで必要な技能を習得する費用) |
葬祭扶助 | 葬式に関する費用を支給 |
※ただし家賃には上限があります。(地域等により異なる)
自治体ごと、世帯構成によって異なる最低生活費
では、実際の「最低生活費」はどの程度なのか。先述したように家族構成や居住エリアによって異なり、細かな計算が必要になりますが、参考として東京都区部の例を挙げてみました。
8種類ある扶助を合計した金額が最低生活費となり、ここから収入を差し引いた額が実際の支給額となります。
(下記の計算例は平成27年度を基準としています)
79,230円(生活扶助)
※上記の他、住宅扶助実費(最高額は53,700円 ※住宅の面積により基準額が異なる)が実費支給されます。
220,640円(生活扶助 207,060円+教育扶助 13,580円)
※上記の他、住宅扶助(69,800円以内)、小中学校の教材費、給食費、交通費等が実費支給されます。
最低生活費は上記のように家族構成により、また地域によっても異なりますが、これらの金額に収入が満たないことが受給条件になります。失業手当や児童手当、児童扶養手当等を別途受給した場合も収入として扱われ差し引かれます。
例えば、収入はあるけど借金の返済で実際の生活費が足りない、というような場合は当てはまりません。
資産がないこと、借金がないことは絶対条件ではない
ここまで、基本となる条件と支給内容について説明してきましたが、もう一歩突っ込んで、誤解の多いいくつかのポイントについて触れておきましょう。
原則として、生活保護はある程度の資産を持っている人は受給できません。しかし「ある程度」の線引きが非常に曖昧なので、一概に資産がいくら以下ならばOKとはいえません。
同じく、建物や土地がある場合は原則としてそれを売却しなければなりませんが、住むための建物や土地については所有が認められることもあります。
借金についても、一律に「借金がいくらあったらダメ」という基準はありません。
また、生活保護受給中は原則として貯金はできませんが(貯金できる余裕があるなら支給額が減らされる)、進学や就職に備えた貯金はある程度認められています。
住居は生活の基盤、持ち家でも生活保護受給は可能
まず「持ち家」についてですが、持ち家だと生活保護が受けられないと言われる理由は、大きく2つあります。
2つ目は、生活保護費が住宅ローンの返済に充てられると、税金で家を購入している、つまり個人の資産形成を助けることになってしまうためという考え方もあります。
しかし、法律にはいつも原則と例外があります。
条件を満たせば、持ち家に住みながら生活保護を受けることもできます。
マイホームを持っていても生活保護が受けられるケース
所有している家や土地が高額で売却できる場合は、それを売って生活費に充てるように言われることもあります。家を売って現金化することで、生活を立て直すことができると考えられる場合です。
一方、所有している家が生活のために必要と判断されれば、所有したままでOKという場合もあります。
その基準となるのが、持ち家を売却した時の価格。
では、持ち家の売却額がいくらまでなら許可が下りる可能性があるのでしょうか。
目安とされるのは、標準3人世帯の保護基準額の10年分と言われています。基準額は地域によって異なりますが、東京都の場合およそ月々23万円。その10年分=2760万円、がおおよそのボーダーラインとなります。
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ローンが残っていても生活保護が受けられるケース
家を持っている場合でも、ローンが残っていたらどうなるのでしょうか。
先にも説明したように、生活保護費からローンを払うことは、税金で資産形成することになるため認められていません。しかし
その残額は、一般的には300万円以下と考えられているようですが、世帯によって個別の事情が違いますので、各自治体に相談・確認する必要があります。
逆に、ローンがかなり残っている場合は、生活保護からその支払いを続けていくことは難しいと判断されます。
しかし、場合によっては売却してもほとんど現金が残らないということもあります。どちらが生活の維持・立て直しに有効なのか、難しい判断ですので諦めずに相談してみることをお勧めします。
車や生命保険があっても、生活保護受給は可能!
車があるからといって生活保護の申請ができないわけではありません。生活保護を受けていても、車を持てる条件を満たしていれば、保有を継続することが可能です。逆に、車の保有条件に該当しなければ、生活保護を受けた後に処分することとなります。
そもそも車はなぜ持ってはいけないのか?
地方に行くと車は生活の要です。なぜ、生活保護を受けると、車を持ってはいけないのでしょうか。
それは、維持費が高額で生活を圧迫すること。もし事故を起こした場合の賠償能力が乏しいこと。生活保護を受けていない低所得世帯との均衡が取れないこと、などが挙げられます。
特に維持費については、燃料費、駐車場代、保険料、車検料等を合わせて考えると、生活保護費の中でやりくりするのは不可能に近いことといえるでしょう。
しかし、何事にも「例外」があり、生活のために必要であると認められれば、車が保有できる場合もあります。
- 山あいの集落等に住んでいて、車が無いと生活が不可能な場合
- 自営業をしていて、車が無いとその仕事ができない場合
- 身体障害者が通院、通勤などにどうしても車が必要な場合
以上の3つの条件のうちのどれかを満たした場合に、保有が認められることがあります。
生命保険があっても生活保護は受けられる
生活保護を受けている人は生命保険に加入できない、と思われている方もいらっしゃるかもしれませんが、これも、ある条件を満たした種類の保険であれば加入が許されますし、解約の必要もありません。
生命保険の加入は、将来の安心を得るために必要不可欠なものでもあります。将来的に生活保護を抜け出したいと考えた時、これまで保険料を払ってきた生命保険は、継続するべき資産と言えるでしょう。では、どんな保険であれば、加入が認められるのでしょうか。
▼生活保護で生命保険の加入が許される3つの条件
以下の条件を「全て」満たした保険については加入が認められます。
- 1)死亡、障害の危険対策を目的とする保険であること
生命保険は「万一の場合に備える」という保障的な意味合いのものですが、中には住宅積立保険などのように、積み立て型保険というものが存在します。積み立て型保険とは、将来に備えて毎月一定額を積み立てる貯蓄的な性格を持つ保険です。
このような貯蓄型保険については、生活保護を受給すると加入が認められません。ただし例外として、子供の進学のための学資保険は加入が認められています。
- 2)月々の保険料の額が低額であること
上記のような「保障型」の保険でも、保険料が高額なものに加入することは認められません。生命保険は、その種類によって保険料がさまざまですが、高額な支払いは生活を圧迫することに繋がります。そのため、生活保護で加入できる保険料の上限額が定められています。
自治体によってその基準額は異なりますが、その世帯の最低生活費の10~15%までは認められているところが多いようです。ただし、あくまでこれは上限額。あなたの生活費を圧迫しないように、よく検討する必要があることは言うまでもありません。
- 3)解約返戻金額が30万円以下であること(申請時のみ)
生活保護の申請時には、預貯金などの資産がほとんどないことが求められます。しかし、あなたが持っている保険の解約返戻金が30万円以上であれば、まずはその保険を解約して当面の生活をなんとかしてください、ということになります。ですから、解約返戻金額30万円以上の場合は保険を解約する必要があります。
借金があっても大丈夫!生活保護は受けられる
生活保護の申請を行うと必ずと言ってよいほど借金の有無を聞かれます。それは、生活保護費は「生活が出来る最低限度額」しか支給されないため、その一部を借金の返済に当ててしまうと、生活が破綻してしまう可能性があるからです。
生活保護からの借金返済も違法じゃない!
しかし、生活保護の申請時点で借金がある場合でも、問題なく生活保護を受けることは可能です。借金があることで生活保護が「焼け石に水」になっては意味がありませんが、
生活保護法には、借金をしている人が生活保護を受けられないという条文は一切ありませんし、借金の返済に充てることを禁止する条文もありません。
生活保護費の使い道については、こういったものを買いなさいとか、こういった事には使ってはいけないということはないのです。肝心なことは「生活ができるかどうか」です。
生活保護受給中も借入は可能、しかし貸してくれる可能性は?
同様に、生活保護を受給しているからといって「借入を禁止する」ということも条文にはありません。しかし現実的には、大手のローン会社などの審査を通って借入ができる可能性は「ほぼゼロ」といって良いでしょう。
すでに持っているカードローンの枠であれば、新規の審査ではないので基本的に利用は可能です。
とはいえ、生活保護という「最後のセーフティネット」を利用するのであれば、これ以上生活を困窮させることのないよう、十分に考えて利用するようにすべきであることは言うまでもありません。
自己破産手続きを指導される基準は?
これまで説明してきたように、法律上は借金があっても生活保護を受けることは可能です。しかし借金の金額が多い場合、生活保護の受給後に自己破産することを指導される場合があります。
自己破産の手続きを指導される基準は、自治体にもよりますが、およそ100万円を超えると指導を行う自治体が多いようです。ただし、100万円以上の借金があると必ず自己破産を指導されるという訳ではありません。あくまで、今後の自立可能性という側面が重視されるのです。
この人はすぐにでも働いて生活保護を抜け出してくれそうだと判断されれば、自己破産の指導はされません。
自己破産をすると、ローンが組めなくなったりといった様々な社会的制限が加わります。自治体の指導も真摯に聞きながら、ご自身の将来に関わることですから、十分に考えて決断するようにしてください。
絶対的な基準は少ないからこそ、まずは相談を
ここで説明したのは、生活保護の一般的な条件、申請の際の注意点です。実際には上記の条件以外にも細かな条件があったり、あるいは上記の条件を完璧に満たしていなくても受給できることがあります。
生活保護には様々な規定がありますが、自治体によって多少ルール・運用が異なる部分があり、同じ境遇であってもある自治体では生活保護が支給されたのに、別の自治体では支給されなかった、というようなことは良くあるのです。
細かい個別の事例については自治体レベル、あるいは職員レベルが現場で判断することも多いので、困った時には上記の内容を参考に、各自治体に相談に行くことをオススメします。